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こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)について考える

カテゴリー: | | 2007年05月16日 02:15

熊本の慈恵病院に設置され、開設初日に、3歳くらいの男の子が預けられていたこうのとりのゆりかご(いわゆる赤ちゃんポスト)について、子を持つ親としていろいろと考えた。
この文は、ただの一個人の考え・感想でしか無く、ここでその考えを表明したところで、世の中的にはなんの影響も持たないかもしれないけど、それでもこの場で言っておきたいと思う。

まず、自分の立場を明らかにしておきたい。
ぼくは、こうのとりのゆりかごの設置には賛成(少なくとも、反対ではない)だ。

こうのとりのゆりかごについては、世間として賛否両論ある。賛成派の根拠は「捨てられることで失いかねなかった命を救うことができる」といったもので、反対派の根拠は「子供を捨てる行為を助長する」といったものだ。

しかし、反対派の方々に、こうのとりのゆりかごを利用しようとしている人に、そして子を持つすべての親に考えて欲しい。こうのとりのゆりかごとはそもそもどんなものなのかを。
こうのとりのゆりかごは、『子供を捨てる場所』ではない。『子供を捨てると、あとは誰かが適当に育ててくれるところ』では決してない。
こうのとりのゆりかごは、どうにも立ちゆかなくなった親が『子供を捨てる』という行為に踏み切ってしまう際に、その子供の『生存の確率』を高めるための受け入れ設備でしかない。つまり、捨てられる子供にとってのセーフティネットなわけだ。

後者の『捨てられる子供にとってのセーフティネット』があることによって、前者の行為が助長されるだろうか?たとえて言うなら、シートベルトがあるからと言って、わざと事故を起こす人が増えるだろうか?
さらに多くの車にエアバッグが付くことで、もっと『事故を起こしたっていいんだ』という風潮になっていくのだろうか?

ぼくにはそうは思えない。子供を捨てると言う行為に踏み切る際に、その捨て先として、捨てられる子供が生き延びることができる可能性が高い選択肢が一つ増えただけで、子供を捨てようと考える人が増えたり、子供を捨ててもいいんだと思う人が増えるとは思えないし、そうはなって欲しくない。
慈恵病院側も、おそらく同じ考えなのだろう。「私たちは“こうのとりのゆりかご”への赤ちゃんの受け入れはあくまでも「緊急避難」的な措置であり、事前相談こそが母と子、双方を救う道であると考えています。(2.“こうのとりのゆりかご”って何?より)」と明言している。
だからこそ、こうのとりのゆりかごとはなにものであるかを、みんなにしっかり考えて欲しいと思う。


以上をふまえた上で、今回の、3歳くらいの男の子が預けられていた件について。
報道によると、男の子は健康状態に問題はなく、自分の名前と年齢を言うことができ、父親に連れられて新幹線に乗って福岡から来た、と話しているらしい。
ちょうど、うちの上の子と同じくらいの年齢であり、また物心のつき加減であるようだ。親になつくし、日々成長がわかる、一番かわいい盛りである。

今回、預けに来た家庭の背景状況は今のところ一切わからない。だから、これはぼくの勝手な思いであるが、他に選択肢はなかったのだろうかと強く思う。

ここで、選択肢について誤解を恐れずに書くと、ぼくは『子供を手放すという選択肢以外(=育児を継続するという選択肢)を必ず選べ』と言っているわけではない。

例えば、いま突然うちのカミさんが死に、そしてうちの実家やカミさんの実家にも頼ることができず、そしてぼく自身は職を失ってしまうような事態がやってきたら…
あるいは、目の前にいる我が子がどうしてもかわいいと思えず、気がつくと子供の生死に関わるほどの暴力をふるってしまっているような事態がやってきたら…
それでもぼくは、3歳と1歳の子供の育児を継続する、という選択肢を常に選ぶことができるだろうか?そして、この文を読んでいる皆さんだったらどうだろうか?
即座に『それでも絶対に育児を継続することを選ぶに決まっている』と返答できる人は、よほど強い人か、想像力が足りない人のいずれかであろう。
ぼくには、現時点でそんなセリフを即答できそうにない。何をどう頑張っても、『子供を手放す』という選択肢を選ばざるを得ない状況は十分に起こりえる、と思う。

だから、今回預けに来た家庭が『子供を手放す』という選択肢を選ぶよりほかに手がなかった可能性は十分に認めた上で、それでも今回の『わざわざ県境を越えて、こうのとりのゆりかごが本来想定していない年齢の子供を預けに行く』という選択肢以外無かったのだろうか、他の選択肢があったのではないか、と思うのだ。

社会制度的に言うと、他の選択肢は準備されていた。例えば児童相談所への相談や、乳児院など児童福祉施設への預け入れなどだ。
しかし、今回預けに来た家庭にとっては、それらの選択肢は、もしかしたら『存在していなかったも同然』だったのかもしれない。例えばそれらの選択肢の存在について周知が不足していたり、あるいは制度的に利用しにくい物であったとすれば、そういった事態は十分起こりえる。

だから、もし万が一、今回預けに来た家庭の方や、これから同じことをしようとしている方がこれを読んだなら、ぜひともそういった他の選択肢があることを知り、そちらにも思いを馳せて欲しい。また、マスコミには、そういった選択肢があることを広く知らしめて欲しい。そして、自治体などには、そういった選択肢の存在についての周知や、必要であれば制度改善を進めて欲しい。

そして最後に、今回預けられた男の子に、今後よい風が吹くことを願ってやまない。



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コメント (3)

エリ:

私も、助かる命が増えるのなら、という考えです。
たしかに、児童相談所の存在はあまりアピールされてない気がします。
一般の人が訪れるよりも警察とか病院とかを経由するほうが多い気が。
今回のことも赤ちゃんポストの話がニュースでがんがん話題になったからなんでしょうね。
児童相談所のことをACとかで宣伝してみたらどうだろう。

全面的にロナに賛成。

この辺の考えは昔から結構同調するよね。
不本意ながら(^-^)

月夜:

私は「こうのとりのゆりかご」賛成派です。
そもそも二言目には「赤ちゃんポスト」と言うけど、あれが不愉快でなりません。

「ありえないこと」(←官房長官・談)ってなんですか?確かに想定外だったかもしれないけど、十分現代社会を見渡せば「ありえる」ことでしょう。
「親にはこどもを育てる義務がある」(←これも官房長官・談)

なに言ってんの!?

義務を果たそうにも果たせない、ケースが年々増加しているのが現実ぢゃない。こどもをおろすより、産み捨てたほうがお金がかからない、って話が広がっているらしい、という噂を聞きました。親としての責務を果たせないで、こどもを作るな、とも思わないわけぢゃないけど、生まれた命をムザムザと処分しろ、と、いうのですか?
「親」は、こどもを産んだら自動的に「親」になれるものではないと思います。(法律上の意味ではなく)

それをちゃんと施策で防いで、よりよくしていけてないのが、現実であり、行政府の責務をまっとうしていない、それが現実でしょう。

子捨て?
ならば、コンロッカー・ベイビーのほうがいいと?
公園のトイレに産み捨てられたほうがいいのだと?

子捨て?
ならば、家に閉じ込められ、虐待され、生きる命を、むざむざと見殺せと?また、死なずとも、命の一部を見殺せと?(こころの傷も含めて)
育児放棄され、ほったらかしのほうがいいと?

生かしておけばいいってもんでもないでしょう。

現実に、児相も施設も定員なんてとっくにオーバー。

昔、近代以前の社会では、家庭で育てきれない子供は、コミュニティが育てた時代もありました。でも、核家族化、無関心化が進み、こどもが隣家で死んでいても、生き地獄を味わっていても、誰も気づかない、そんな社会です。

今回のケースは、こどもの記憶に残って…云々、言われていましたが、どこにおいていかれたのか、の違いだけのような気がします。

今回、どういう事情があったのかはわかりませんが、子を託していった親の気持も、もっと考えて欲しいものです。(警察庁が保護者責任遺棄罪に問わない理由も考えてみてください)

慈恵病院のかたがた、お願いです。水際で食い止めるためにも、この制度を存続させてください。ほんとに命の最後のラインだと、私は思います。

そして、政治家の方々、ジャーナリストを称する方々、批判ばかりではなく、社会を動かしてください。そのために、TVを見て視聴率に貢献し、選挙にはちゃんと投票に行っているんです。

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